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- 234 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/08/29(月) 02:44:11 ID:Z+HT0pSW0
-  友人の話。 
 
 実家近くの山に、とある用事で一人入っていた時のこと。
 そこは実家の持山だったが、入る前に「礼儀正しくしろ」と注意を受けた。
 何のことかわからず、あまり気にしなかったという。
 
 山に入って二日目、異臭が彼の目を覚ました。
 テントから顔を突き出すと、目と鼻の先に排泄物が放置されていた。
 大きさからして間違いなく人間のそれだ。ご丁寧にトイレットペーパーまで
 ひらひらと残されている。
 
 何処のどいつだ! 向かっ腹を立てたがそれで目の前の物体が消える訳でもない。
 仕方なく、その場で穴を掘って処分した。
 
 三日目、やはり悪臭に起こされた。
 恐る恐る外を見ると、二つに増えた排泄物体が鎮座していた。
 一体何が起こっている? 困惑しているうち、あることに気がついた。
 物体の一つは土塗れになっている。まるで土の中に埋まっていたかのように。
 
 
 
- 235 :雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :2005/08/29(月) 02:45:16 ID:Z+HT0pSW0
-  (続き) 
 
 その時突然、頭に馬鹿げた考えが浮かんだ。
 「これってもしかして、俺自身が排泄した物!?」
 急に何もかもが嫌になり、さっさと埋めてその場から逃げ出した。
 
 しかし、翌日も物体は追ってきた。
 怖れていた通り、その数は三つに増え、内二つは土塗れになっている。
 堪らず、その時点で山を下りたという。
 
 「そりゃババウソに付け回されたんだ」
 家に辿り着いて話したところ、祖父にそうぼやかれた。
 聞けばその山を縄張りとしている川獺がいて、勝手にババをした者を許さずに
 追い回すのだとか。それもご当人のババを使って。
 「だからババウソ」と実家では呼ぶのだそうだ。
 付いて来なくなった所が、縄張りの境界なのだという。
 
 「雉撃つ前に、山に一言断らないからだ。無作法な奴じゃの」
 祖父さんはそう言って、それ以上は相手にしてくれなかった。