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- 302 :全裸隊 ◆CH99uyNUDE [zenratai@hotmail.com sage] :2006/01/04(水) 08:56:28 ID:jR+9C2g90
- 冬、朝晩の気温が急激に低下する頃だった。
夏場なら、いくつもテントが張られる場所だったが、その時は
俺たちだけだった。
寒さに震えながら夜を明かし、早朝、出発準備をしている俺たちの
テントは霧に取り巻かれていた。
西の空は真っ暗だが、東の空は色を変え始めている。
本格的な日の出直前、一日の中で最も寒い瞬間がやってくる。
ファスナーを開け、フライシートを跳ね上げると、空気が小さく
しゃりしゃりと音を立てた。
霧氷だ。
友人と二人、零下の世界へ這い出した。
空気全体が、静かで小さな無数の光となり、夜明けを迎えつつある
空の色を映し、その一帯を飾っていた。
友人の身体に触れた氷の粒が溶ける瞬間、それまでの小さく鋭い光とは
別の、温かみのある光を発した。
友人のシルエットに沿って、溶ける氷の光が瞬いた。
きらきら光る空気の中、別の光が友人を包んでいた。
気温と霧の濃度と風、空の光、全てが絶妙だったに違いない。
後にも先にも、あんな光景を見たことがない。
- 303 :全裸隊 ◆CH99uyNUDE [zenratai@hotmail.com sage] :2006/01/04(水) 08:57:21 ID:jR+9C2g90
- 何となく見回すと、数メートル先でも同じように氷を溶かし、光を
発している場所がある。
何もない小さな空間を光が囲み、瞬いていた。
人の形かどうか、それは分からない。
こじつけるなら、人が座り込んだくらいの高さだと言えなくもない。
地中からの蒸気や地熱など、いくつかの考えが頭に浮かんだ。
ともかく、空気よりも暖かい何かがその場にあることだけは確かだ。
空気がゆるむのを感じ、その後のわずかな一瞬、無数の光が、
とんでもなく冷たい霧へと姿を変えた。
数メートル先の小さな空間を伺うと、そこへ霧が流れ込んでいた。
何もなく、誰も居ない。
間近で金属音が鋭く響き、霧の流れは止まった。
霧氷に気付いてから、数秒の間に起こったできごとだ。